「被災地いらなかった物リスト」問題について

熊本地震直後、東日本大震災や他の災害を経験した方々がTwitterなどで「#被災地いらなかった物リスト」というハッシュタグでツイートをされていました。(その頃私はまだTwitterは登録しておらず、たまにブラウザで見ている程度でした。)

その一連を見ましたが、自分が実際に被災し、確かに今は」必要ないなという物がまとめられていました。被災地側からしたら納得いくものでしたが、物資を送る側にとっては「貰う側なのに失礼!」という意見もありました。

どちらの気持ちも大切だと思いますが、私が被災して実際感じたことを記したいと思います。

不快に思われる方がいらっしゃったら申し訳ございません。しかし、どの場合でも感謝の気持ちがあることはご理解いただければと思います。

被災地いらなかった物リストとは?

冒頭で記したように、現時点で不要な物が「#被災地いらなかった物リスト」とハッシュタグ(まとめて参照できるキーワード)にして周知されていました。X(元Twitter)やFacebookなどSNSやネットをあまり使用しない方にとっては見慣れないものだと思います。

反対に「#震災時に役立ったもの」のハッシュタグで多くのアドバイスがあり、防災本やマニュアルには載っていないような細かな事や実際に役立つことなど、大変参考になることが多かったです。

しかし悲しいことに、その「#被災地いらなかった物リスト」で論争もあったようです。

折り鶴・千羽鶴

千羽鶴を心を込めて作って送ってくださる方もいらっしゃると思います。そのお気持ちはとても嬉しいですし、心の支えにもなります。しかし、それでも問題視されてしまったのは、送る時期だと思います。

被災直後の避難所は、多くの人が押し寄せるため自分の荷物すらままならない程、スペースに余裕がありません。また、まずは生きるために必要な衣食住が最優先となります。

避難所や住まいが落ち着きを取り戻す頃に送っていただくと、部屋や施設などに飾れますし、あらためて感謝できて前向きな気持ちになれると思います。

寄せ書き・手紙

折り鶴と理由は同様です。皆さんからの温かい応援メッセージを読む余裕が無かったり、飲食物の物資が優先するのでなかなか被災者の手元に届きにくい場合もあります。

せっかく心を込めて書いていただいたのですから、じっくりと読むことができる時期であれば心の支えになると思います。

おにぎりなどの消費期限が早いもの

実際に避難所でおにぎりをいただくことがありました。しかしそれは、近所で炊飯器が使える家で作ってすぐに食べられる場合・物資で既製のおにぎり(コンビニのような)をその場で食べる場合に限られました。

個人で送っていただく場合は、物流も安定していないためどうしても数日かかってしまいます。とてもありがたいのですが、もし日数や温度により少しでも腐敗していたら食中毒にもなりかねません。

ただでさえトイレの水が流せず不衛生な中、お腹を壊すなど体調を崩すと悲惨です。病院ですぐに診てもらうことも難しい状態です。私の地域でも、食品の扱いについては非常に気を張っていました。

古着

難しい問題だと思います。古着への感覚は人それぞれ大きく違います。平気な方から苦手な方までいますし、汚れなどで明らかに着られない服やサイズの仕分けで手間がかかってしまいます。中には季節感の異なる服も…。

そのため最近では新品のみと統一して募集する場合があります。

中には綺麗に洗濯やクリーニングをして、温かいメッセージを添えて送ってくださる方や、反対にとても着られないような古着を送る方もいるのが現実です。

実際、古着は阪神淡路大震災の時から人手が取られ大量のゴミとなってしまい問題に。「被災者なんだから贅沢を言わずありがたく着ればいい」という考えの方もいると思います。

しかし、自分が被災してヨレヨレの服や使用済みの肌着を貰う場面になったらどうでしょうか。個人の感覚とは思いますが、初めてその何とも言えない悲しさ・辛さに気が付くと思います。

また、古着に限らず「被災者には何も非が無い自然災害なのに一般的な考えを持つのは贅沢」とさらに被災者を追い込むことは避けましょう!せっかくの好意を無駄にする傲慢な被災者の問題もあると思いますが、多くの方は常識のある一般的な人々です。

「もう着ない服がたくさんあるから役に立つかも!」と思っている方は、その服をリサイクルショップやフリマなどで求めている方へ販売し、そのお金を募金してみてはいかがでしょうか?

私は自分が被災してから、衣類や一度使った物はそのように現金化し、募金として各被災地へ届くように行動しようとあらためて感じました。

時間の経過とともに必要な物も変化する

私は熊本地震本震後に避難しましたが、その時にまず最初に思ったのが、「とにかく命を繋がないと!!」ということでした。

ここまで身の危険・命の危機を感じたことは今までありませんでした。被災時点で、子どもたちは1歳と3歳。空腹や恐ろしさを我慢できる年齢ではありません。大人のように自己管理もできません。

とにかく子どもに食べ物を!と家から探したり、地域で備蓄していた物をいただきました。しかし、食べ物などがどうにか調達できるとなると、以下のように、次々に必要なもの・ことも変化していきました。

  • 極度の緊張と不安で不眠、車や避難所(マットなど何もなし)の為、少しでも普通に眠りたい
  • 気が付けば何日も同じ服装、着替えたい
  • 水がないため、トイレなど様々な不衛生さが気になる
  • 揺れが落ち着いてくると、自宅や周囲の片付け修復をしたい

そのため、支援してくださる方々と被災者の方々との需要と供給が一致しない部分が出てきてしまうのだと考えます。私も自分が被災するまでは、「とにかく食べ物と飲み物が必要だ!」と思い込んでいる部分がありました。

公的機関が募った物資を参考にする

物資を送る際は、やはり公的機関や、信頼できる組織が発信した情報を確認するのが確実だと考えます。実際に目の前で何が必要か判断し募集しています。

物流が動き始めたら、親せきや友人など個人宅へ物資を送ることも増えていきます。そのときは「今何が必要?」と一言聞いてみましょう。

食べ物や飲み物は避難所で貰い、着替えも一応できている、という場合は、災害義援金お見舞金が一番役に立ちます。何も「お金が欲しい!!」というわけではありません。

前述の通り、時が経つにつれ被災地では必要な物が変わります。そんなとき、状況に応じて有効に活用できるのがお金なのです。

皆が自治体から災害義援金を貰えるわけではない

大きな地震では、家が倒壊する方も多くいらっしゃいます。もちろんその方々優先で見舞金が分配されるのは何も問題ありません。(私は賃貸でしたので細かくは分からずすみません。)

しかし、自治体から見舞金が分配されない方も数多くいます。その方々は、普段の生活に戻るため自力で全てを取り戻す必要があります。電化製品や食器、家具、大きいわけでは無い破損部分の修理、など一つひとつを積み上げると結構な額になる場合があります。

そんな時に、個人で渡す場合は見舞金が役立つと思います。実際に私も他県の親類から見舞金をいただきました。壊れたものを買いなおしたり、停電で全てダメになった食材を買ったりなど大切に使い、非常に助かりました。

「いらない」ではなく「受け取る準備がまだできない」

災害は今後も全国のどこかで起きます。いつどこでどんな災害が起こるのかは分かりません。予測できる台風などもあるとはいえ、完璧ではありません。いつだれが被災者・支援者になってもおかしくないのです。

万が一の事態に陥ったときに、被災者・支援者の双方が、過去の災害から学んだことを活かすことが大切です。

今回取り上げた「いらなかった」とされた物も、送る時を見極めることで、心を込められている事がしっかりと伝わります。感謝の気持ちに溢れ、とても心が温まり前を向くきっかけになる物だと思います。

災害時は混乱した状況が続きますが、どうか冷静に判断し、皆で助け合っていければと願っております。

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